1.プログラム名:
リスクに関する科学技術コミュニケーションのネットワーク形成支援プログラム
2.プロジェクト名:
放射線安全確保に資するコミュニケーション技術開発と専門家ネットワーク構築
3.拠点機関:
京都大学放射線生物研究センター
4.連携機関:
茨城大学、福井大学、長崎大学、東京工業大学、高エネルギー加速器研究機構、放射線医学総合研究所、日本放射線影響学会、セシウムバスターズ郡山、伊達市諏訪野町内会、福の鳥プロジェクト、NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット、公益財団法人体質研究会、公益財団法人ひと・健康・未来研究財団
5.プロジェクト内容:
福島原発事故によって、我が国に、突発的かつ広範囲に起きる原子力関連事故に効果的に対応できる有効なリスクコミュニケーション技術と実施体制がないことが次第に明らかとなってきた。その根本的な原因は、突発的かつ広範囲なリスク事象が生じた際のリスクコミュニケーションが平常時の科学情報コミュニケーションと様々な点で異なることが充分に理解されていないことにあると考えられる。
まず第一に情報が伝わるために必要な条件は、伝える側の知識と価値観と受ける側の知識と価値観に大きな差がないことが重要である。しかし、我が国では、原子力および放射線がエネルギー源や医療手段として汎用されているにもかかわらず、公教育でほとんど取り上げられていない。伝えたい情報に関する知識レベルが高いほど正確な情報が伝わりやすい。この点の改良のためには、教育システムの充実が必要である。
第二に、情報の流し手と受け手の価値観が異なり、互いに相手の価値観を認めない場合は、情報は正確に伝わらないばかりか、情報提供がかえって不信感の増幅に繋がる場合が多い。このことを回避するためには、互いの価値観を認め合う信頼関係の構築が必須である。
第三に情報を出す側が充分な専門性を持つとともに、常に信頼できる情報を提供し、その活動が、何ものからも独立性・中立性が高いことが必要である。
今回の原発事故を受けて、この三点のいずれもが不十分であることが明らかである。そこで、本事業は、これらの問題点を回避しつつ、突発的なリスク事象発生時に必要なリスクコミュニケーションス技術の開発と独立性・中立性の高い(放射線安全に関する)専門家ネットワークの整備の二点に焦点を絞り計画した。
具体的には、福島原発事故後の放射線の健康影響に関する科学情報コミュニケーションがどのようになされ、それがどのような結果を招いたかについて、情報の流し手(政府や専門家側)および情報の受け手(住民側)の立場から詳細に調査・解析し、その成果に基づいて、(1)突発的かつ広範囲なリスク事象を乗り越えるために必要なリスクコミュニケーション技術の開発をおこなうとともに、そのスキルを最大限に発揮できる(2)(放射線安全に関する)専門家ネットワークの構築を目指すものである。
教育システムの充実は、極めて重要なポイントであるが、本企画では、直接関与をしない。
この活動から、「インターネット時代を反映して放射線の健康影響に関する情報が氾濫したことによって、かえって情報の真偽が判断できず、
人々の間に不安が根強く蔓延している」ことを感ずる。こうした現象は、事故現場からの距離に関係なく生じている。不安の原因は、様々あげられるが、(1)政府および地方自治体が発する情報に納得いく説明がほとんどないこと、(2)科学者の判断が一人一人全く違うこと、(3)そのために全てを信頼できないという一種の社会崩壊状況に陥っていること、などが引き金となっていると解析できる。
そうした中で住民の心をもっとも掴む意見は、「放射線は危険」とする立場にたち、「政府、東電そして科学者を糾弾」する一部の方から発せられたものである。そして、その人物の講演をきくことがきっかけとなり、多くの人が、福島ばかりか、首都圏、そして日本を離れる行動を起こしていると聞く。まさしく、世紀末を演出する思想集団のようで極めて残念である。また、驚いたことに、こうした極端な行動を選択する人々は、医師、教師、自治体職員といった、こうした事態が生じた時に、意思決定のリーダーとなるべき階層に属する人達であり、我が国の文化程度の低下を象徴していると危惧される。
こうした現状に流されず、大多数の人々が納得して自分の判断をすることが、理性ある健全な社会を保つために必須であり、それを実現するために、正確な情報を地道に伝える活動が今後5~10 年のスパンで必要である。そして、これまで異なる形式の講演会を実施してきた経験から、写真を貼付した福島県伊達市の例のように少人数の膝詰め討論会が放射線の健康影響について不安を持つ人々に納得のいく判断をして頂くための情報を提供できるもっとも適した方法であると実感する。
6.全体目標:
福島原発事故後に、政府や科学者が発信した科学情報によって、国民が「リスクコミュニケーション不信」に陥った原因と経緯を詳細に解析し、突発的かつ大規模な放射線関連事故が起きた際にとるべき、(1)リスクコミュニケーション技術の開発とともに、リスク事象発生時に、そのスキルを最大限に発揮しリスクコミュニケーション活動を独立・中立的におこなうことのできる(2)(放射線安全に関する)専門家ネットワークの構築を目指す。
7.機構図:
本課題の目的を達成するための連携ネットワーク機構図。大学(6大学)、学会(日本放射線影響学会)、公益財団法人(2法人)および市民活動団体(3団体)が連携ネットワークを形成し、突発リスク発生時に機能を発揮するリスクコミュニケーション技術の開発をおこなう。このことによって、緊急時であっても科学的基盤に立って、独立的・中立的に政府等施政者への勧告を発することが出来るとともに、国民に適切な情報提供が出来る(放射線安全に関する)専門家ネットワークの構築を図る。
8.平成24年度の活動状況:
(1)平成23年9月〜平成24年12月末まで
リスクコミュニケーション情報収集活動(放射線の生体影響に関する勉強会)
総計61回実施済⇒Q&A活動が見れます
(2)平成24年10月29〜31日
福島県磐梯熱海温泉・カンポの宿
放射線影響学会ワークショップ「低線量(率)被ばくの生体影響を考える」
〜科学的事実に基づく情報発信のために⇒開催内容が見られます
(3)平成24年11月10日
東京お台場・産業技術総合研究所臨海副都心センター別館 11階
パネル討論会「福島から学んだリスクコミュニケーション」 ⇒開催内容が見られます
(4)平成25年1月12日
京都大学東京オフイス会議室
市民公開講演会「食卓が家族を救う」 ⇒開催内容が見れます
9.平成24年度成果:
(1)平成25年4月10日
平成24年度事業は終了しました。
⇒活動内容が見られます
⇒平成24年度活動成果の評価結果が見られます
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